韓国の地方財政調整制度について（韓国経済システム研究シリーズ№3）

本稿では、韓国の地方財政調整制度を概観し、同制度に関するモデルを用いて、財政調整と地域均等化効果について調べる。地方財政調整制度は、自治体の財源保障と地域間の財政衝平化機能を担当する。本稿の分析によると、韓国において地方財政調整制度がある程度の地域間均等化の役割を担ってきたことは評価できるが、その反面、地方財政におけるモラル･ハザードの問題が生じかねないことが指摘される。本稿の構成順にその内容をまとめると、以下の通りである。 第１節では、まず韓国の地方自治体の長と議会議員の選挙制度や自治体の構成について簡単に述べている。1995年6月、広域自治体の長と議員、そして基礎自治体の長と議員、という4種類の直接選挙が同時に行われ、選挙制度において住民自治が始まったが、地方自治を実現するための財政的な土台は整っていないのが現状である。これから地方税や政府間財政調整制度をどのように整っていくかが問われている。 第2節では、地方歳入について議論した後、政府間財政関係を図示する。地方歳入推移を調べることによって、地方財政調整制度と地方歳入の仕組みとの関連がより体系的に理解できると考えたからである。韓国の発表統計では、地方税外収入が最も高い割合となっているが、実際にはそうでないことに注意する必要がある。その主な理由は、毎年多額の繰越金などが発生する仕組みとなっているからである。第2節では総繰越金などを調整して後の実質の税外収入（手数料や使用料など）は地方歳入の9.2％に過ぎない（2001年）ことや、移転収入への依存度は最近増加傾向にあることが示される。 第3節では、政府間財政調整制度について、地方交付税の仕組み、基準財政需要額や基準財政収入額の運営上の特徴、地方予算のソフト化問題などについて述べる。また、地方交付税以外の地方譲与金や国庫補助金、及び日本とは違う韓国の地方教育費特別会計における財政調整制度についても説明を行う。 第4節では、韓国地方財政の調整がどのように行われたかを評価するため地方財政調整制度に関するモデルを展開する。この第4節のモデルに基づいて、第5節では韓国の広域地域を対象に移転財源による地域間の財政均等化効果について調べる。また、地方歳出と関連変数との相関関係を取り上げ、モデルによる結果を裏付ける。分析の結果、韓国の地方財政歳出が地方税や所得水準とはその対応関係が成り立たないこと、すなわち、地方税の原則と言える応益原理が実現されていないことを示し、今後韓国地方財政における応益原理の実現が重要な課題であることを指摘する。 最後に第6節では、本稿での分析と改革議論などを参照に、日本との比較の視点も取り入れながら韓国地方財政調整制度の課題について取り上げる。その内容として、日韓の交付税に焦点を当て、その会計上の運営の面並びに財政不足額計算の仕方の面から、相違点や課題について述べている。